07/12/30 聖夜に光る二筋の呪詛
12月24日の夜、哀しくも恒例となった男だらけの飲み会 in ショットバーに参加し、軽い酩酊感を残しつつ宴もたけなわ、さて帰路につこうかと店を出たところ、プロムナードの上に乾いたルーズソックスが二枚揃って落ちていました。
今回飲み会の場となったショットバーは、遠景に教会が望めるという聖夜に究竟のロケーションにありました。四軒隣りのコンビニから漏れ聞こえるクリスマスソングが厳かな調べとなって次々と寒空に溶けていきます。
そもそも下戸の代名詞たる僕が飲み会に積極参加し、あまつさえ酩酊してしまう程に呑んでしまったのには深い理由があります。決して「ああこいつ『もやしもん』に嵌ったんだな。時期的にも絶対そうだ」などと思わないでください。時に正論は人を傷つけます。
ともかく、『酒に弱い』というのは生来の体質です。つまり、僕と酒との間には生前に決定された隔絶があり、僕が転生でもしないかぎり僕と酒は永遠に仲良くなれないのです。結ばれることをDNAに否定されているという構図は、兄妹間の恋愛に似ています。そう思うと、なんだか禁忌を犯すようで俄然やる気が出ます。などと書くと誤解を生みそうですし、わずかに犯罪の匂いも漂ってきました。特に兄妹間に限定したことで、よりネガティブな方向に誤解が進むことでしょう。
さて、件のソックスは今まさに脱いだばかりといった感じで路傍に横たわっていました。我々が店に入るときにはなかったのですから、これは聖夜を虚しく過ごす僕たちへのギフトであるという解釈で間違いありません。やや荒くなった鼻息が空気を白く染める中、路上に横臥する脱ぎたてルーズソックスは教会の十字架との対比で背徳的エロスを放出しています。とか、そんな風情を感じ取る余裕は一切なく、あまりの不気味さに全員が二,三歩あとずさりました。このとき感じた不気味さは、古本屋で買った禁色(三島由紀夫著、新潮文庫)に30センチほどある長い髪が挟まっていたときに似ています。
ルーズソックスの主である女子高生は、突如として自身のアウトオブファッションに気付き、コンビニで無難なやつに履き替えたに違いない、クリスマスに鳥肌とは洒落が利いている、などと口々につぶやきながら僕たちは家路を急ぎました(具体的にはダッシュしました)。あんなところにルーズソックスを脱いだバカは反省文を書いて提出しなさい。
ではよいお年を。